デキ婚話

【デキ婚話その4】流産した話

新居への引っ越しを終えた2週間後

「いつ入籍しようか?」なんて話をしていた頃

彼女のお腹の赤ちゃんが流れてしまった

お腹の中で、赤ちゃんが育たなかったようだ

人生で一番悲しい出来事だった

その時のことを

僕の目線で書いていく

心拍は見えるが、育っていない

物件探しや、他のことと同時に

病院通いは続けていた

この時から

だいたい1週間か2週間おきだった

毎回そうだったのだが、産婦人科の先生の声のトーンというか

少し含みをもった言い回しが気になっていた

お腹にエコーをあてながら、

「まだなんとも言えないけどね」とか

「次に来たときわかるかなー」とか

先生的には、

そのあたりで赤ちゃんが育たないことを予想していたのかな

なんて、あとから気づいた

先生「ちょっといいかな?」

その日の検査、産婦人科の先生が

「ちょっといいかな?」

とカレンダーを取り出した

声のトーンから、なんとなく察しがついてきた

「完結に言うと、赤ちゃんが育っていません

先生は言った

胎のうができた時期から今まで、

お腹の中の見た目に変化がないのだ

先生は、カレンダーと胎児のイラストを見せながら

「今の週数ならこのくらいのフェーズなんだけど、、、」

と、僕たちにわかりやすく教えてくれた

先生は、「何日かすれば、お腹から出てくる。その時にまた来てほしい」と言った

彼女になんて声をかけたらいいのかわからなかった

言葉少なく、新居へ帰ったのを覚えている

流産も、小さな出産だ

病院へ行った数日後、

「お腹が痛い、出血した」

と彼女が言った

それは陣痛のようで

痛みに波があったそうだ

その後、彼女はトイレに入った

赤ちゃん(というか胎のう?)が出てきた

僕たちの子どもは流産した

こんなに悲しいことってあるんだな

産婦人科の先生は、

「検体がとれれば持ってくるように」

とも言っていた

つまり、出てきた胎のうを容器に入れて持ってこいということ

「見る?」と彼女

タッパーに入れられた胎のうは、

赤くて、細胞の塊のようだった

止まらない涙

二人で泣いた

もうめっちゃ泣いた

命を宿したのに、育たなかったこと

彼女に辛い思いをさせたこと

何もできなかった無力さに、涙が止まらなかった

二人だから、乗り越えられた

でもね、やっぱり一番つらいのは彼女だ

僕がめそめそするのは、最初だけでいい

無力さを感じているからこそ、

目の前にいる彼女だけは、支えなくちゃ!

それでもまあ、凹みまくった

しばらくは仕事が手に付かなかったし

親に連絡したときも泣いた

一旦、泣けるだけ泣いて

落ち込むまで落ち込みきったら、

僕は彼女を励ます立場に切り替えた

美味しいものを食べたり

くだらない動画を見たり

スマホのパズルゲームをしたり

いっときでも悲しさを忘れる時間を作った

僕が落ち込む瞬間もあったけど、

その時は彼女が支えてくれた

二人だから、乗り越えられたのだ

精神を安定させるために

つらく悲しい出来事があったとき

精神を安定させるには、思い込みの力も必要だと感じた

つまり、スピリチュアルな思想だ

しかし、僕は大学で理系の研究をしていたので

スピリチュアルな話は好きではなかった

非科学的だし、宗教めいた思想は性格に合わなかった

天国だって存在しないし

死ねばただの有機物だ

焼却された身体は、

水や二酸化炭素、窒素化合物などに分解され

物質の循環により、地球のどこかに存在することになる

むしろこのくらいの感覚だった

でも、今回は思い込みの力が必要だった

ドライに考えてしまうと、心が壊れそうだったから

「赤ちゃんは天国に一旦天国にもどったんだよ」とか

「『ぼくが産まれるのは、今じゃない』って気をつかってくれたのかな?」とか

「きっとまた、会いに来てくれるよ」とかね

そう思わなきゃやってられないくらい、辛かったなぁ

もちろん彼女もそうだったと思う

【結論】一番つらいのは女性、一緒に乗り越えることが大切

一番つらい思いをしたのは彼女

一緒に落ち込み、感情を共有しよう

そして、支えてあげよう

その経験がふたりの絆を深めることになる

僕たちがそうだった

パートナーとして、しっかり向き合うこと

対話を重ねることがめっちゃ大切

そうすれば、いつかきっと

「あのときは大変だったね」

なんて話せるときがくるから

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